「少年」と「青年」の間をゆらゆらする息子に左肩を掴まれていた話。
「自分の眼鏡を買いに行く」という、代打不能な用事で不本意ながら母である私と電車に乗って街に出かけることになって、息子はとてもめんどくさそう。
しかも急病人救護の影響で電車が遅れ、通勤電車並みの満員電車で、なんとか乗り込む。掴まるところはなかったけれど、通勤で満員電車の乗り方を心得ている私は問題ない。息子の掴まるところはあるだろうかと確認しようとした時、彼は左手のスマホから目を離さないまま、右手で私に掴まってきた。
私より10cm以上背が高い息子がガシッと掴んできたのは、私の手でも、服の裾でもなく、左肩。
揺れるたびに力が入るその手の動きを感じながら、自分より背の高い人に身体的に頼られているのはなんだか奇妙なことだなと思った。
中学生の息子の心は「少年」と「青年」の間をゆらゆらしている。
身体は大きくても、今この瞬間は「少年」だ。
もう少ししたら、私の身体に触ることさえ拒否するかもしれない。
そのうち、何かに掴まること自体が不要になるかもしれない。
いずれ、並んで歩く機会が滅多にないことになるかもしれない。
そして、いつか来る遠い将来、私が電車の揺れに耐えられないかもと心配し支えてくれるかもしれない。
その日が来るのが楽しみです。